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自分が感銘を受けたあらゆるジャンルの作品を完全な主観で備忘録的に書きとめていきます。 ■このブログの続きとして、【2109年を生きるゲーム職人への手紙。】に移転しました。 ■ときどきネタバレを含むのでご注意のほどを。
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わりと前の話になりますが、とあるきっかけからPCゲーム『Fate/stay night』をやりました。

そして、これまた打ちのめされました。
すげー出来栄えのゲームでした。

ぼくがすげーというのは、だいたいが『(テーマなどを)伝える為の仕掛けがすごい』という意味です。


美少女ゲームはプレイヤーの一人称で語られるから感情移入しやすく没入感が高いとか、この5、6年の流れとして感動重視型の「泣きゲー」が流行っているという予備知識はあったものの、ぼくは正直パソコンでまともにゲームをプレイしたのは「ウィザードリィ外伝 戦闘の監獄」しかありませんでした。
(「戦闘の監獄」もまた往年のウィズファンならば魂をくすぐられる作品です)

ということで、『Fate/stay night』はぼくがまともに熱中した記念すべきPCゲーム第一作です。(なので、この作品が他とくらべて突出しているのかどうかはわかりません)


プレイしてみて、そのクオリティの高さと構造の妙に感激しました。

プレイしたひとならわかると思いますが、感動の最大の理由は、1周目のシナリオによって描かれたドラマ(テーマ)を、2周目のシナリオで別人物の視点を交えて、もういちど主人公とともにドラマ(テーマ)を語りなおす点です。
それもただ語りなおすのではなく、テーマの考察を一歩深めた内容を突きつけられることになります。

この構成によって、一周目で語られたテーマの『深度』をさらに一段深めているのですが、ただ深めているというよりは、重ねることで『厚み』を増しているというべきでしょうか。

プレイヤーは新しい刺激(さらに踏み込んだ展開や葛藤)を与えられながら、ドラマ(テーマ)を反復することで、ぐっとテーマに対する思い入れを深めていきます。

 

ただ単に、「繰り返しプレイ」というゲームの特性を活かしているというレベルではなく、「没入感の高いPCゲームの特性」を活かして「小説」を著し、「ゲームの特性である繰り返しプレイ」により「二重の厚みを持たせた深みのある小説作品」に仕上げたことが、何よりも秀逸だと感じます。

おそらく美少女ゲームの多くは、分岐していく多数のルート(シナリオ)をプレイすることで、多角的に物語や世界を伝える仕組みが基本的な構造だと思うのですが、聞いた話だとほとんどが「横の広がり」でドラマを繋げていくことや、クリアごとに情報の階層を深めていく手法で、『Fate/stay night』のように「ドラマ(メッセージ)を縦に重ねて掘り下げるタイプ」はあまりないようです。

縦に掘り込むには、深い考察力と構成力・筆力が要求されるので、誰にでもできる技ではないでしょう。
『Fate/stay night』を「すごい」と思うのは、(好きな要素はたくさんありますが)なによりこの一点においてドラマの形成が秀逸だからです。


(※)残念ながら、2回しかプレイしていないので3周目についてはまだ知りません。
(※)美少女ゲーム(泣きゲー)にこのレベルまでドラマを掘り下げている作品が他にもたくさんあるのだったら、すごい業界なのだなと思います。

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演劇は、蜷川幸雄の公演が関西に来た時だけ観ます。

特に、シェイクスピアが好みです。


『蜷川幸雄×シェイクスピア』は、ぼくの中で今のところ最強のハーモニーです。

ぼくが魅力を感じるところは、作品メッセージを伝える為に研ぎ澄まされた、無駄のない洗練された構造美でしょうか。


■■■蜷川幸雄について

蜷川さんの公演を必ず観るのは、彼の演劇のつくりに惚れているからです。トータルでいうと、「骨太」で「鮮やか」な演劇だと感じます。

●「骨太」というのは、熱く力強い演出もさることながら、どんと地に足のついた重いテーマがある点です。
(原作の質の高さとは別に、蜷川さん自身がそれを通して伝えたいメッセージが、どしんと重たい)

●「鮮やか」というのは、舞台装置、衣装などを含めた「演出の切れ味」の鋭さ、鮮やかさです。
(公演の規模が大きいので、質が高いというのもありますが、それ以上に、ダイナミックな仕掛けが用意されていて、楽しませてくれます。そして、楽しませてくれるだけでなく、多くの場合、そのダイナミックな仕掛けこそが、ぼくらにメッセージを訴えかけてきます)

どちらも、ぼくのツボです。

力強く豪胆に、ど真ん中の剛速球を投げてくる。その上、あっと驚く仕掛けでメッセージが胸の深いところまで飛び込んでくる。そんな印象の演劇です。

全体に統一感があり、作品に乗せたメッセージを伝える為だけに特化した舞台。
極端な見方をすれば、そんな風にも観ることができて、やはりそのへんがぼく好み。


■■■シェイクスピア

原作にはそれほど詳しくはありません。
ただ、蜷川さんの公演でも、シェイクスピアと、そうでないのとでは、驚くほど出来が違うので驚いたのです。

シェイクスピアのものを幾つか続けてみて、違う脚本の公演を見た際に、設定や登場人物や場面に、あまりに無駄が多いので、驚きました。

「なんでこんなに出来がよくないんだ?!」 と思って、よくよく考えてみたら脚本が違うからだと(遅すぎるのですが)気づき、その段になってはじめて、シェイクスピアの本がいかに秀逸だったかを知りました。


印象でいうと、作品を構成する要素に『無駄』がないのです。

すべての要素に意味があって、響きあっている(……と、感じられるように創られている)。

無駄やノイズが多い方が楽しかったりもするので、一概にそれだけを評価するわけではないですが、ぼくの求める創作スタイルは、『無駄のない構造美』なので、さすがはシェイクスピアだと唸りました。



シェイクスピアの本に、老練な蜷川さんの演出が加わることで、鋭くパワフルな舞台が誕生します。
ゴールデンコンビです。



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