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自分が感銘を受けたあらゆるジャンルの作品を完全な主観で備忘録的に書きとめていきます。 ■このブログの続きとして、【2109年を生きるゲーム職人への手紙。】に移転しました。 ■ときどきネタバレを含むのでご注意のほどを。
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 このブログは、ぼく自身が自分の「感動のツボ」をさがす旅のつもりで書いています。
 詳しく検証していく場合、「なぜ感動したか」の検証も大切ですが、「なぜ感動に至らなかったか」の検証も大切です。
 ということで、機会をみて触れたいと思った作品は、感動如何に関わらず、コメントしてみたいと思います。

 

 高畑京一郎の名著『タイム・リープ』(上下巻)を読みました。

 とてもしっかりと設計された作品で、プロローグから下巻のラストまで一気に読み進めてしまいました。どうしても食指の動かない作品もあるので、それを考えるととても面白く読めた作品だと思います。

 でも残念ながら、ぼくのストライクゾーン(感動のツボ)からは外れました。


 なにをより良き構造美と位置づけるかは、その人それぞれの感性や好みなど、美学の話になるので、秀作だと断わった上で、この作品に感じた物足りなさについて書きます。

 タイム・リープ(時間跳躍)の概念を用いた先駆作を踏まえ、ドラマとして面白く仕上げています。
 ラストまで先の展開が気になって読んでしまうくらいの読みやすさと展開の妙はあったのですが、逆に言うと、「それ以上のもの」がありませんでした。

 それが「感動作」の位置づけに至らなかった理由です。


 「それ以上のもの」とは、主に2点あります。


●まず一つには、「予想通り」過ぎました。

 物語の仕組みは、まず最初にドラマ(時間パズル)のピースが欠けたところから始まり、一つずつカチッカチッとピースがはまっていくことで、事態が明らかになっていき物語が進みます。
 そして、冒頭に投げかけられた最初のパズルピースがはまることで物語が完結するのですが、勘のいい人は途中でこのエンディングが想像できてしまいます。
 また、クライマックスの展開についても、パズルの欠け方とこれまでの展開から、どうなるかが読めてしまいました。
 期待としては、そこからさらに一歩踏み込んだ時間パズルの謎が襲ってくるなどして欲しかったのですが、そういったどんでん返しや盛り上がりがクライマックスに用意されていませんでした。ラストに、さらにワンランク上のドラマや仕掛けを盛り込んでいたら、おそらくぼくにとっての感動作の仲間入りをしていただろうと思います。

(※)ただこの感想は、作品の所為ではなく、どちらかというと、ぼくの読む時期が遅すぎた所為だと思います。ぼくが20才くらいの頃……もっとタイムリープや作品構造が云々といったことを考えていなかった時代……に読むと、かなりの衝撃を与えてくれた名作の一つになっていたと思います。
 ライトノベルですので、想定された年齢層よりもぼくが成熟してしまった為、先の展開や構造が見えすぎてしまったのだと思います。

●二つ目は、面白い物語だったのですが、そこからもう一歩人間性などに踏み込んだメッセージ性がなかった点です。

 事件が起こり、事件が解決し、ヒーローとヒロインが結ばれる。額面どおりのドラマで、この部分のつくりは丁寧でした。
 ですが、受け手自身に向けて創り手が投げかけてくるメッセージ(想い、問題提起、サガ、心の闇など何でもいいのですが)が感じられませんでした。

 著者の意図は、そのあたりには無いのだと思います。「時間パズルの仕掛けの妙」がこの作品の軸であり、そこから逸脱する(ある意味余計な)人間ドラマはかえって無い方が、作品としてスマートにまとまります。

 ですので、ぼくの上記の意見は完全にお門違いなものだろうと思っています。


 以上、2点を書きましたが、こうやって見てみると「今のぼくが求めているもの」と「著者の描きたいもの・意図」が異なるのだということが、よくわかります。

 ぜひとも10年前に読みたかったです。
 10年前に読んでいたら、この作品が与えてくれた感動がぼくのなかでどのように芽吹いていたか、などと考えるとちょっと悔しい気持ちにもなります。

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