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自分が感銘を受けたあらゆるジャンルの作品を完全な主観で備忘録的に書きとめていきます。 ■このブログの続きとして、【2109年を生きるゲーム職人への手紙。】に移転しました。 ■ときどきネタバレを含むのでご注意のほどを。
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いま一番気に入っているTVアニメが、「妖奇士」です。

この作品の主人公・往壓(ゆきあつ)が39歳(高年齢)でなければ、ぼくはこれほど注目し、そして深い感銘をうけなかったと思います。


往壓の悲劇は、少年時代に『異界』という非現実に心奪われてしまったことではじまります。

それ以来、彼は『異界(夢の魔力)』に囚われ、『現実(空虚な毎日)』から逸脱してしまい、気がつけばいい大人になってしまっていました。

この生き遅れた感のある男が、ある事件をきっかけに『異界』へ逃げず、『異界』から逃げることもやめ、そして『現実』に踏みとどまる決意をすることで、この物語は幕をあけます。
主人公のこの立ち位置がとても好きです。


一~二話のこれらのエピソードが、強烈にこの作品を方向付けていると思います。

職も未来もない歳をくった主人公(実は成熟した大人でもあるのですが)
行き場のない浮民(流民のような者たちのこと)
ひとを魅了する『異界』
異界から出現する『妖夷(ようい)』
そして、ひとや物の本質をとりだす異界の力『漢神(あやがみ)』

天保という時代を土台に、これらの設定を加えることで、夢と現実の両立や、精神的な自立にすっかり不器用になってしまった今の(日本の若い)『世代観』を、これほどみごとに描き出している、設定の妙にぐっとハートを鷲づかみされました。

妖奇士がストレートに描いているのは、まぎれもなく『いまを生きるぼくら』の姿です。

 

受け手の感性などによって異なる多様な視点からその作品をとらえたときに、いくつもの解釈で筋が通るようにできている作品は「できが良い」と思います。
解釈が一つしかできないのではなく、見方や想像力によって、どんどん解釈の幅や奥行きがふくらんでいく作品が理想的だと。

たとえば、ぼくは妖奇士を『現代日本の若い世代の抱える焦燥感(ぬるま湯に浸かる自分との葛藤)』といった切り口でとらえましたが、もっと別な解釈もできると思います。
そういうふうに受け手がある切り口から見た際に、設定やシナリオの「意味づけの毛並み」がきちんと揃っていることが出来の良し悪しだろうと思うのです。


そうやって、ひとつの視点を持って妖奇士を眺めてみると、

ひとの心に住まう幻想……『ここじゃないどこかを求めるこころ』……は裁けない

それに人一倍惹かれながらも、妖夷と戦う『奇士(あやし)』たちの存在

ひとを殺すのでなく、そのひとが作り出してしまう妖夷をこそ倒す。それが奇士の役目なのだということ

ひとはひとりひとり異なる。みな異人なのだという言葉

ひとはこの世で生き、生きるために食べるということ

……そういったメッセージたちが、明確かつ力強く作品のテーマを浮き彫りにしていきます。
作品の根底に敷き詰められた強いメッセージ性がステキなだけに、ここから先、この作品が生きるか死ぬかは、どれだけ初志貫徹でまっすぐに深く深く「初志」に踏み込めるかだなと思っています。


(※)二期(十三話)になってOPが変わりました。残念な予想が的中してしまい、二期のOPにはまったく力がありませんでした。ややここ数話の展開に遊びが増えてきたのは、制作スタッフが作品に馴染んできたからだと解釈し、ヘンな方向のテコ入れが入ったとは考えたくないものです。ノリや萌えに走らずに初期の作風を守ってそのまま伸ばしてくれれば、この作品はとても良いものに仕上がりそうですし。
と思っていたら、この新OPです。このOPは残念ながら「一期のメッセージ性」の延長線上にはなく、ここまでの「流れ」をブツリと切ってしまうものでした。物語もそうならないことを祈りたいものです。好きな作品なだけに、すごく嫌な予感が膨らみます。

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